リトケイの活動
2025年10月、台風22・23号により甚大な被害を受けた八丈島・青ヶ島。離島経済新聞社による緊急支援プロジェクトとして、2026年1月から「シマビト大学 in 八丈島」が始まりました。
シマビト大学は、旅前のオンライン講座と現地での島合宿を通じ、心豊かに生きる術(すべ)を「シマ(人と人が支え合うコミュニティ)」から学ぶプログラム。シマビト大学 in 八丈島は「災害に負けないしなやかな心を学ぶ」をテーマに、1月から6月まで毎月開催を予定しています。2026年1月22~23日に実施した初回の様子をレポートします。
シマビト大学の特徴は、現地集合・現地解散。プログラムは半日ですが、その前後は各自の都合に合わせて自由に島を楽しむことができます。東京から八丈島までは船で約10時間、飛行機で約1時間のため、飛行機を使えば当日入りも可能です。1月開催回は夜行船で向かうメンバーが多かったため、八丈島に向かう道中から早速交流が始まりました。
夜22時。東京や新潟、沖縄などから、約10名の参加者が竹芝のフェリーターミナルに集合しました。フェリーが出発すると、まずは旅の始まりを祝って全員で乾杯。その後はデッキで東京湾の夜景を眺めたり、ラウンジでお酒を片手に盛り上がったりと、思い思いの時間を過ごしました。翌朝8時。無事に八丈島に到着し、シマビト大学が始まりました。緊急支援プロジェクトを共同で実施した一般社団法人アットアイランド代表の伊藤奨さんが、現地を案内してくださいました。
今回のプログラム内容は、2つ。台風で被災した事業者の視察(1日目午後)と、島の皆さんと一緒に防災について考えるワークショップ(2日目午前)です。後者は緊急支援プロジェクトの振り返りとして、特別に実施しました。
視察では、うみかぜ椎茸を栽培する「大竜ファーム」、明日葉の加工工場と直売所を持つ「あしたば加工工場」、約40頭のジャージー牛を飼育する「八丈島乳業」の3社を訪れました。それぞれの場所で、台風が襲った日の様子と、その後どう過ごしてきたのかをお話いただきました。
台風に慣れている八丈島でも、今回のものはかつてない規模だったそうです。甚大な被害の中で特に深刻だったのが、断水。水源で土砂崩れが発生したため、復旧が遅い場所では数十日もの間、水が出なかったといいます。大竜ファームでは断水の影響で椎茸を栽培する菌床が枯れ、数千万円の設備投資をした工場も暴風で全壊。あしたば加工工場でも工場が全壊したほか、観光バスでやってくるツアー客の受け入れができなくなり、大きな収入源を失いました。八丈島乳業では、停電で機械が使えず手作業で搾乳をしたものの、衛生条件を満たせないため出荷できず、やむなく廃棄したそうです。
元通り再建できるか分からないという不安を抱えながらも、「悔やんでも仕方ないので前を向くしかない」と自らを奮い立たせる姿が心に残りました。また、「行政の支援が届くまでの間に緊急支援金があったおかげで、なんとかやりくりすることができた」「クラウドファンディングを通して資金を集められたことはもちろん、これほど応援してくれる人がいると分かったことが復興の励みとなった」という声を聞きました。緊急支援プロジェクトに協力してくださった全国の方々の想いが、しっかりと届いていることを感じました。
緊急支援プロジェクトの振り返りとして実施した2日目のワークショップでは、島の皆さんとシマビト大学の参加者で「これからの防災」について考えました。冒頭、飲食業、宿泊業、農業など様々な業種から参加した約10名の島の方に、被災時に困ったこと・助かったことを共有いただきました。
そこで感じたのは、八丈島の共助の強さです。停電や断水の状況に地域差があったそうですが、「ここは水が出るよ」という情報共有のおかげで助かったという声がありました。また、自らも被災しながらも、「島のためにできること」を探し、実行した人が多くいたことも知りました。飲食店が炊き出しを行ったり、ホテルが被災者に宿泊場所を開放したりといった動きがあったそうです。一方で、建築業者や資材に限りがあるため、壊れた家屋の再建がなかなか進まないという島ならではの課題もありました。
気候変動により、この先も今回のような台風はまた来るはず。その備えとして「互いに助け合える島外の関係人口づくり」、「誰が何をできるのか、スキルの可視化が必要」、「チェーンソーの扱い方や簡単な家屋の修理など、島民自らが復興に携われる技能を身に着けておく」といった意見が挙がりました。
シマビト大学では、プログラム以外の時間は自由行動です。参加者は伊藤さんの案内で島内の様々な場所を巡りました。島を一望できる牧場や海を眺める足湯、熱帯の植物があふれるカフェ、島の歴史や産業を学べる民俗資料館などなど...。もちろん、島寿司やくさや、明日葉の天ぷら、麦焼酎など島グルメもたっぷり堪能しました。
また、夜の宴や二次会など、島の皆さんやほかの参加者と交流できる時間が多くあったのもシマビト大学ならでは。初めて八丈島を訪れる参加者も、こうした時間を通して「八丈島と言えばあの人」と顔が浮かぶ関係性を作れたようです。
島の人々の「前を向くしかない」という強さと、支え合うコミュニティの力。それらを目の当たりにし、遠く離れた場所からでも関係人口として島を応援し続けたいと改めて感じた2日間でした。
文:卜部奏音
課題はあるけれど可能性もある約400島の有人離島。総人口の0.5%が守る島々の文化的営みは、日本の本質的な豊かさとゆたかな領海の維持に貢献しています。人口減少が進み、島だけでは叶わないことが増えるなか、リトケイは「島に愛のある関係人口」の創出・拡大と島々との共創により、島の平時・危機・未来を支える活動を行っています。どうかこの活動の継続にお力添えください。

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